キョウキョウ二次創作

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プロローグ

腰を深く落とし、両手で丸を描き腰のあたりまで引き絞る。
「かぁ……めぇ……」
全神経を両手のひらへと集中しながらも、全身の力を漲らせる。
「はぁ……めぇ……」
一気に、腕を前に出して、両手のひらから力を解放するようなイメージをしながら叫ぶ。
「波あぁっ!」
両腕からは青白く光る気が一気に開放……されず、何も起こることはなかった。

「はぁ、はぁ、ふぅっ……やはり、ダメか」

今日も朝一番の日課にしている、かめはめ波を出せないかという試みは失敗に終わり、落胆する田中竜二。

田中竜二がドラゴンボールという漫画に出会って、70年の月日が経った。初めてドラゴンボールを読んだ時の衝撃はいつまでも田中竜二の心のなかから消えることはなかった。そして、主人公の孫悟空が亀仙人と出会って、修行をして、天下一武道会での強者との手に汗握るバトルには、いつの歳になって読んでも心躍るような気分にさせてくれる。もうちょっとだけ続くんじゃという言葉とその後の展開には唖然として、そして、更に続く強烈なキャラクターたちとの戦闘に痺れさせられた。そんな大好きな漫画であったが、一番好きな必殺技は「かめはめ波」だった。

ドラゴンボールに出会ってからの、田中竜二の人生の目標はかめはめ波を撃つことになった。かめはめ波を撃つために、あらゆる修行を行った。ドラゴンボールを読み終わった田中竜二は、まず空手、柔道、そして剣道の3つを習い始めた。始めてみて分かったことだが、田中竜二には並々ならぬ武術の才能があった。そして、どれもまじめに諦めず挫けず確実に続けることで学生のうちに、空手は黒帯に、柔道は3段に、剣道も4段を取得した。全国大会に出場して、優勝する事もできた。

しかし、その頃になっても田中竜二はかめはめ波を撃つ事は出来なかった。誰もが思うだろう、漫画の世界は空想で、現実じゃないんだという考えは田中竜二には全くなかった。ただひたすらに修業を続けた。田中竜二は諦めることなく、自分の鍛え方が少ないことが原因だからと考え、さらに修行に打ち込んでいった。ボクシング、レスリング、相撲、合気道、柔術、弓道、剣道、少林寺拳法、日本拳法、拳道、スポーツチャンバラ、禅刀道、太道、刀道、などなど他にも沢山、目につくありとあらゆる武道武術の道をひたすらに進んだ。

日本で最強と謳われるようになっても、変わらず、そしてひたすらに修行を進めていた。

更に年が経ったある日、田中竜二は突然立ち上がることもかなわぬ体になった。それは本当に突然で、身体に力が入らなくなり倒れたのだ。食事を取ることもうまく出来ないようになり、田中竜二は一気に死へと向かう道へと歩かされたのだ。若い頃からの強烈な修行の数々が、年老いた身体に一気に襲いかかったのが原因だと考えられた。

田中竜二はすべての出来事を受け入れて、突然の異変である身体がボロボロになり立てなくなることも、死へと向かう自分の身体も受け入れた。ただ2つだけ不満があるとすれば、日課にしていたかめはめ波を打てるかどうかの確認ができないようになったことと、修行がこれ以上続けられないということ。この2つには不満に思い、落胆をしていた。

田中竜二が辿ってきた武道の道に関係するすべての人たちは田中竜二の状況に驚き、悲しんだ。そして、なんとか解決できないかと医者を手配し手を打ってくれた。そんな行動に田中竜二は感謝したが、結局身体の問題を解決は出来ずに、身体が動かなくなって7日経ったある朝、沢山の人達に囲まれながら田中竜二は息を引き取った。

田中竜二は修行へ捧げた人生の幕を閉じた。生涯現役を貫き、82歳という歳になるまで修行を続けた田中竜二は、武道の世界では伝説となったのだった。

そして、彼の修行する目的が己の人格を磨くことでも、道徳心を高めるためでも、最強の道を目指したのでもなく、ただ「かめはめ波」を放ちたいがためと言う事を知られることは無かった……。

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